オーストラリア・ケアンズ周辺の森は、太古から保存された動物たちが息づくタイムカプセル

  2017/02/03  ケアンズ観光情報

恐竜の絶滅、人類の歩み…、すべてを静かに見守って来た世界最古の森。ケアンズで、1億8000万年を遡るとも言われる時の重みが目の前に広がる奇跡を感じ、ここに息づく生命の深さに触れてみたい。

 

 

地球が誕生したと言われるのは46億年前。太古の地球は、天体の衝突や火山の噴火、地球全体の凍結、海水の蒸発、気温や大気中の酸素濃度が急激に変わるなど、劇的変化に繰り返しみまわれました。

過酷な状況の中で、35億年前以降には単細胞生物の藍藻が、3億5000万年~4億年前には昆虫類や両生類、2億年前~6500万年前までは恐竜やほ乳類など、環境に適応した数々の命が地球上に誕生しました。

今回は、悠久の時を経て現代に生き延びた有袋類や単孔類など、オーストラリアに棲息する世界的に貴重な動物たちについて、地球の進化と重ね合わせて見てみたいと思います。

オーストラリアで有袋類が生き残った理由

現在、ほ乳類は、大きく「赤ちゃんを胎盤で育ててから出産する真獣類」「赤ちゃんを未熟な状態で産み、”育児のうと呼ばれる袋” で育てる有袋類」「卵で出産し母乳で子供を育て、便や尿を1つの排泄孔から排泄する単孔類」の3種類に分けられます。

 

オーストラリアの動物と言えば、すぐに思い浮かべられるコアラやカンガルーは、言わずと知れた有袋類。世界の他の地域ではほぼ見られない有袋類の動物たちが、オーストラリアに多く生息するのはなぜでしょうか?

それには地球の進化が関わっています。

 

 

太古の地球は、約3億年前にほぼ形成されたと言われるパンゲア大陸と呼ばれる超大陸があり、オ―ストラリア、南アメリカ、南極は地続きだったため、動物も植物も自由に行き来していました。

2億5100万年前、史上空前の環境変化によって、きわめて短い時間に生物の95%が一斉に絶滅するという大量絶滅が起こり、これを境に生物界の再編が始まります。

 

その後パンゲア大陸は、徐々に北のローラシア大陸と、南アメリカ大陸/オーストラリア大陸/南極大陸から成るゴンドワナ大陸に分裂を始めます。

 

白亜紀に登場した有袋類は、南アメリカを中心に全土で繁栄し、オーストラリアに移動してきたと言われています。その後、更なる変動で北アメリカと南アメリカが陸続きになると、南アメリカに棲息していた有袋類は、北アメリカから南進してきた真獣類と競合した末、オポッサムなどを除いて絶滅の道をたどっていきました。

 

一方で、6500万年ほど前にゴンドワナ大陸から独立していったオーストラリア大陸は、その後どの大陸とも接触が起きなかったために、植物や動物が隔離された状態で保存されることになったのです。

オーストラリアで有袋類が生き延びた背景には、以下のような条件も奇跡的に揃っていました。

  • 6500万年前から、植物や動物が隔離された状態で保存された
  • 偶然にも有袋類を脅かす動物がいなかった
  • アボリジニがつい200年前までこの大陸の自然を理想的に護っており、人間による動物の絶滅が他の大陸に比べ驚異的に少なかった
  • オーストラリア大陸の地盤は安定したプレートの上に成り立っていて、他の大陸ほど移動しなかったために、気候を含めて自然環境の急激な変化にみまわれなかった

 

Green Ringtail Possum【キミドリリングテイル】:クイーンズランド州北部の標高300m以上の熱帯雨林にのみ棲息

 

現在ではおよそ4500種のほ乳類が知られていますが、現存する有袋類はたったの270種ほど。有袋類の生き残りであり、進化を繰り返して現在も生息するカンガルーやワラビー、ポッサムなどをケアンズ周辺で見られるのは、とても貴重な体験と言えるでしょう。

 

Musky-Rat kangaroo【ニオイネズミカンガルー】 ケアンズ周辺半径150kmにのみ棲息

 

単孔類が「生きる化石」と言われる理由

ケアンズの豊かな自然環境では、先述の有袋類を含め、多種多様な動物が棲息していますが、中でも単孔類(現存するのはカモノハシとハリモグラのみ)は特別な存在です。

それは、恐竜が台頭していた時代から存在する、ほ乳類の中で最も古いサバイバーだから。

 

Platypus【カモノハシ】:哺乳類だけれど卵を産み、アヒルのようなクチバシを持つ不思議な動物。

 

ほ乳類の祖先は、三畳紀(2億5100万年前~2億年前頃)に出現した獣弓類という爬虫類だと言われ、単孔類もここから派生しました。有袋類と真獣類は、白亜紀末期に別の進化をたどって登場しました。

 

1.木登りカンガルー:現在の有袋類の祖先はジャイアント・ポッサム、カーニバラス・カンガルー、マースピアル・ライオンだった。
2.カモノハシの祖先 3.ゴールデンボーバード:熱帯雨林で進化した初の鳴き鳥。その後、世界中に広がった。 4.カソワリ:エミューと同じく飛べない鳥。他の鳥類とは違う経路で、8千万年前より進化してきた。

 

ジュラ紀になると、草食性、肉食性を含めてたくさんのほ乳類動物が登場します。( 恐竜が繁栄していた頃のほ乳類は、恐竜の活動範囲の及ばない生活をしたため夜行性が多く、現在も鳥類に比べると視覚が全般的に劣っているそう)

突如として恐竜が絶滅したのは6500万年前。巨大隕石が現メキシコに落下し、地球の気温が急激に下がったことが原因というのが有力説です。当時いたほ乳類も、単孔類や有袋類を除く多くが中生代で姿を消していきました。

恐竜がいなくなった地球では、その後、真獣類ほ乳類が爆発的に居住地を広げ、多種多様な種が現れていきます。ヒトもその1つですね。

 

Short-beacked Echidna【ハリモグラ】:体長30~50センチ。全身針で覆われており、身を守ると きは頭と足を引っ込め、針を立てて丸まる。

 

カモノハシもハリモグラも、現在ではオーストラリアとニューギニアでしか見ることができません。カモノハシにいたっては、オーストラリアの中でも、一部地域にしかいないほど貴重です。(同国の誇る動物として、両者ともシドニー五輪のマスコットや5セントコイン、20セントコインに抜擢されています)

ヒトが地上に姿を表わしたのは700万~500万年前。祖先は2億年前に遡るとも言われるカモノハシやハリモグラはまさに「生きる化石」ですね。生態の不思議だけでなく、こんな背景からも特別な動物であることがわかります。

 

 

ケアンズ周辺で見られる自然は、動物も雨林も非常に古い年代のものであり、単に自然が豊富という以上の意味合いを伴います。

気が遠くなるような地球の生の営みに思いを馳せるとき、まるでタイムカプセルのように保存された自然や動物たちが息づいていることの奇跡を感ぜずにいられません。

 

 

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記事中の動物の写真は、ケアンズ在住自然観察ガイドの松井淳さんによるもの。
オーストラリア ケアンズ生き物図鑑の著者さんです。同書では、ケアンズ市街から日帰りで行ける範囲で見られる生き物のうち、比較的、観察する機会の多い昆虫、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類を、特徴をしっかりとらえた生態写真と、わかりやすい解説文で紹介されています。巻末にはおすすめの自然観察地の紹介も。ケアンズの動物や鳥について知りたい方はぜひ入手しましょう。松井さんは、掲載種数が何と430種もある「オーストラリア北部クイーンズランドの野鳥図鑑」(Kindle/iBook)も出版されています。

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ケアンズでは、熱帯雨林に行くツアー、野生のカモノハシを探しにいくツアー、動物探検ツアーなどが催行されています。いらっしゃる際は、ぜひ!

●主な日本語ツアー

ケアンズの動物サファリツアー オージーエコガイド・シェーンのツアー。『カモノハシ、木登りカンガルーをはじめとする様々なオーストラリア特有の野生動物冒険に加え、神秘の大自然と野生動物達を楽しんでいただけます』

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