しごとをしていて迷いや違和感が出てきたら、自分にこの質問をしています。

しごとをする上で大切にしていることの1つに、優先順位があります。

異なるプロジェクトの優先順位ではなく、1つのしごとにおける優先順位。言い換えると、「そもそも何でこのしごとをしているんだろう?」と、本質に還ること

 

もう23年も前になりますが、なぜリビングインケアンズという情報誌を始めたかというと、ケアンズに住み始めて、「日本語情報誌があったらいいのになあ」と思ったからでした。自分が読みたかったのです。すごく単純な動機でした。

田舎で何もすることがない、という声も聞くけれど、どうせ滞在するなら(長期であれ短期であれ)、その場所のことを知って楽しんだ方がいい。

自分も住んでいる町のことをもっと知りたいし、自分が見たり聞いたりしていいと思ったモノコトや場所を他の方にシェアしたら、その人ももっとケアンズの滞在を楽しめるんじゃないか、と考えました。

ツテも編集経験もお金もなかったけど、何かすごくワクワクして、他のしごとをしながら構想を練っていったのを思い出します。

そして、10年近く経ったころ。

ふと違和感が出てきたんですね。

わたしたち、広告主さんと読者さん、どっちに比重を置いて誌面を作ったらいいんだろう?

 

以前、「自分流の幸せな働き方」という講演をさせていただいたときのスライドから。

 

フリーペーパーは、広告収入で成り立っていて、当時は契約も順調に増えていました。それはとても有り難いことですが、書かなくてはならないことも増えてきます。

一方で、お金にならなくても読者さんに伝えたいことがある。

ページ数を増やすと印刷費が増えて、そのお金の出所は広告主さん。

雑誌全体の広告の割合は一定以上にしないようにして、記事とのバランスは心がけてきましたが、固定費の支払いもあるし、ビジネス的に考えるうちに迷いが生じてきた。

 

近くに相談できる人がいなかったので、思い切ってある方に連絡してみました。

それは、「リクルートの創刊男」の異名をとったくらたまなぶさん

「とらばーゆ」「フロムエー」「エイビーロード」「ゼクシィ」「じゃらん」「ダヴィンチ」など、業界を塗り替えたメディアをリクルート在籍20年間に14も創刊されたことで有名なプロデューサーです。

 

大阪かどこかの出張帰りの足で、つまりお忙しい中時間を割いてくださり、初対面の私に、何時間も惜しみなく色々なお話をしてくださいました。

超自然体で、偉そうに気取るところや気負ったところがまったくない、ダンディで素敵な方。何より、器の大きさに感動。。!

リビングインケアンズは、ちゃんと目を通してくださっていて、広告も取れてるしいい感じだと思うよ。の後、私の葛藤についての話に。

 

「読者がアクションを起こしたくなる記事。アクションにつなげる記事。それを創るのが、フリーペーパーの役割だ。

常に、読者目線!

それが結局は、広告主さんに還元されるんだよ」

 

スパーッと答えていただき、目の前の霧が晴れていくのを感じました。

本当にそう!「読んだ人がケアンズ滞在を楽しんでくれたらいいな」って思って創刊したんだった!

くらたさんのお陰で、清々しく初心に立ち返ることができたのです。

元々はシンプルなのに、いつしか本質から離れていった自分に気がつきました。

この焦点がぶれなくなってから、広告主さんと読者をつなぐ紙媒体以外の展開(イベントやツアー、マーケットなど)が生まれて行きました。

 

母が経営する会社の50周年記念パーティーにて。(お互い迷ったりしつつ励まし合ってます)

 

どんなしごとでも、何となく今のままでいいのか?と違和感を覚える時があるかと思います。

いつしか、売上を上げることだけが目標にすり替わってしまったり、他との競争に走ってしまったり、進みが遅くて焦ったり。

何を大切にして、しごとをするか。その優先順位 〜「そもそも、なぜこのしごとをしているのか」。ぶれてきたと感じたら、それを問うのです

すると、ふらふら揺れていた心がまた静かになり、やるべきことを淡々とこなすことができます。

 

そこには、しごとは相手がいて成り立つという基本があります。自己満足では通用しない。そもそも、自分がやりたいという気持ちで始めたかもしれないけど、よく考えてみると、相手に喜んでもらいたいから、のはず。

 

くらたさんは、とらばーゆ(女性の転職専門誌)を創ったとき、女性の気持ちを知りたくて、何千人に聞き回った末、最後は女言葉になり、社内で「くらたが壊れた」と言われたそうです(笑)。

笑い話に聴こえるけど、徹底したユーザー目線を貫いたからこそ、リクルートでヒットメディアを誕生し続けられたんですね。ユーザーになり切って、悩みを解決したいと奔走されたのだと思います。

 

潜在的なユーザーの願望を形にした結果は、ほとんどの媒体が即日完売。ビジネスとしても大成功。

「エイビーロード」や「じゃらん」が登場する前は、旅行というと、ガイドさんが旗をもって決まった所に行くパック旅行が普通だったのに、今では、自分で行きたいところを探して自分で予約する。宿や観光地も、自分たちのことを伝えることを始めました。

業界の常識まで塗り替えてしまったのです。

「陸ルート?どんなルートだ?」と田舎の宿から言われたり(笑)、お前のせいでこっちはやりづらくて仕方ない、と大手旅行会社の人に目の前で名刺をビリビリ破られたり、新たな市場を開拓するのは並大抵ではなかったというお話も色々としてくださいました。

それでも、「もっと自由で素敵な旅ができるよ」を提案したくて、生みの苦しみを乗り越えられた。

 

くらたさんが代表を勤めておられる株式会社「あそぶとまなぶ」Facebookページよりお借りしました。右脳と左脳のバランスで、夢を現実にされてきたのですね。

 

結局、

仕事の熱量は「命に対する愛」に比例するのかなあと思います。

それぞれが思い描く「こんな世界になったらいいのに」を自分のできる取り組みで果たしていく。

 

だから、色んな情報や周囲の動きに翻弄されそうになっても、立ち返れる場所〜そもそも、わたしはなぜ、このしごとをしてるんだろう〜を大切にしていきたいと思うのです。

 

天職・魂が喜ぶ 天分ビジネス

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