面白くて、深くて、前向きな気持ちにさせてくれた、月亭方正さんの落語独演会
2017/01/05 スローライフ日記
明けましておめでとうございます。
2017年がやってきました。どんな年になるのか、さっぱり予想がつかないだけに楽しみです。(せいぜい2週間後の予定しかわからないゆるい生活です。。)
先日ケアンズで行われた月亭方正さんの落語独演会に行って来ました。
これがプロの噺家さんなんですね!!お1人とは思えない世界の広がり。テンポのある展開にぐいぐい引込まれ、たくさん笑わせていただいて。本当に素晴らしかったです。
落語は初体験だったのですが、ただ面白いだけじゃないんですね。すごく深い。
笑いながら色々と感じるところがありました。
オープンで温かい、落語の登場人物が素敵
今回の演目の舞台は江戸時代でしょうか。舞台装置も衣装もなく、噺家さんの技量1本で魅せる。想像がわーっとふくらみ、当時の様子が生き生きと蘇るのは感動もの。
噺の中の、思ったことをポンポン、ハッキリ言い合う人々のやりとりや喜怒哀楽を出し合う姿は、滑稽でどこか切なくもあり。。
お腹にためてから出た言葉は、色んなものがくっついて重いけど、その場で出す言葉は無臭で丸くて軽いんですね。「馬鹿言ってんじゃないよ」なんて、あっけらかんと言えるのにちょっぴり憧れます。相手にどう思われるか気にし過ぎると、言葉は止まります。逆に、相手に対する愛があれば、ストレートな物言いでも大丈夫。これは子育てから学んだこと。
落語の登場人物みたいに、オープンな心で人と関わり、さらっとした言葉が出る人になりたいなんて思いながら聴いていました。
台本のない物語を継承する、落語家のすごさ。
落語の中の、人情味あふれる人々が織りなすドラマは、笑いあり涙あり。すんなり感情移入できたのは、月亭方正さんの人間性をベースにした演技があったからこそ、です。
「僕がこの「しじみ取り」の噺の中で好きなのは。。「がんばれよ〜」ってセリフを言う場面です。続けていれば、何かいいことがあるって気持ちで手を振る姿がたまりません」と、退場前に静かに語られたとき、方正さんが噺に命を吹き込む源を感じました。
(ちなみに、同じ噺で私に一番響いたのは、親切は自己満足かもしれない。本当の優しさは、困っている人を自立に促すことだ。っていうメッセージ。聴く人に解釈の自由を与えてくれるのも、落語の素晴らしいところですね)
落語って、台本がないそうです。だからこそ、語り部である噺家さんの人間性が映されます。
物語1つ1つに込められたメッセージを咀嚼して演技で伝える。それは、噺家さんの心がニュートラルで、しかも技術がないと難しい。
つっかえたり、仕草やセリフの言い回しに気を遣い過ぎていたら白けてしまうし、観客との息も合わせないといけない。台本に頼れないということは、噺家さんの技量1本勝負。神髄に入っていくしかありません。
呼吸をするように自然に演技をして、どんどん噺の世界に引込むには、一体どれだけの稽古を重ねているのでしょう。
そういえば、月亭方正さんは、演目の合間に「笑いの神様が降りて来る瞬間」のお話をされていました。才能と使命感と努力の末に与えられる贈り物かもしれませんね。
落語には台本がないと知って、思い出したのは先住民アボリジニのこと。彼等にはドリームタイムストーリーという、たくさんの伝説や物語があるけれど、文字を持たないので、全て口頭による継承なのです。4万年とも5万年とも言われる悠久の時を経て、物語が受け継がれてきたのは驚きの事実。
ストーリーテラー(語り部)は、部族の中で指名された人だったそう。
先代の口から伝えられた物語を心の耳で聴き、
メッセージを偏りのない心で咀嚼し、伝える。
それは、まさに選ばれし人の仕事だと思います。
落語は、その上に表現力と笑いが求められるのだから、その道を生きると覚悟した方だけができる仕事なんじゃないかな。
笑いとしゃれで大切なことを伝えていく落語に、日本人の感性の高さが現れてる。
笑いって最強の癒し。笑っていると、悩んでることも何となく吹き飛ばされていく。「ユーモア」って、本当に大事ですよね。だから、人として大切なことを、最後に「落ち」をつけて、笑いで伝えていく落語って、本当にすごい!(恐い噺、泣かせる噺もあるそうだけど)
舞台装置や衣装や台本に頼らない潔さが生み出す物語の余韻や、広がる世界観が聴いている人のハートを掴みます。
オージーに落語のことを説明しようとして、単なるコメディアンとも違うし、シャレが効いてるから噺を英訳しただけじゃ面白さが伝わらない、って気がつきました。
直線的/高圧的に模範解答を与えるお説教でなく、聴いた人がそれぞれのメッセージを受け取り、自分で感じる能動的な呼びかけを投げかける。
落語は、日本人の感性の高さが反映された芸能の1つだ!と思いました。
月亭方正さんのチャレンジ精神に感動
実は、わたし山崎邦正さんが出演したテレビ番組を見たことがないんですよね。。テレビでの芸風はよく知らないけど、落語を拝見して、笑いのプロだと思いました。一流です。演目の前後も、噺の最中も声を出して笑わせてもらいました。
でも、落語家として活動され始めたのは40の時だったそう。(ちなみに、方正さんと私同じ年齢)こちらの番組をさっき見てビックリ。
テレビの中の「笑われる」キャラから、「笑わせる」という本来の自分に戻っていくチャレンジの軌跡。落語に出会ったときの感動。落語家になると決めてからの努力などが映っています。
人を笑わせるのが好きな人って、基本、優しい方ですよね。だから、それまでのテレビに出てる人気の芸人という立場からの挑戦って、並大抵の覚悟じゃなかったのではないでしょうか。しかも普通は若くから弟子入りする落語の世界に、40歳過ぎてからの入門。
今のままでいいのか、っていう拭いきれない違和感。心の渇きを潤すものに出会ったとき、自分に正直に生きる選択をする。喜びの中で仕事をする。
落語だけでなくて、とても尊いことを、方正さんから教えていただきました。
2017年の始まりに、素晴らしい機会をどうも有り難うございました。
2年に1回くらいケアンズで独演会をしたいと言っておられたので、次回も楽しみです!