祖母の形見の指輪をリフォームしていただきました。
2017/03/13 ショップ (パウチ) 裏話&商品
パウチに工房があるジュエラーのTAKAさんとは、自然とジュエリーについてのあれこれの話になります。「祖母の形見で使ってない指輪があるんですよ」という私の何気ない一言から。。
「どんな指輪ですか?」「緑色の石が入ってます。デザインがクラシック過ぎて普段使いできないんです。大き過ぎるし」「緑の石。。奥に影みたいの見えます?」「さあ」
ということで、翌週、実際の指輪を見ていただきました。
「わ、きれいなエメじゃないですか」一瞬で見抜くTAKAさん。「知り合いでエメラルドを海外に買い付けに行く人がいるんですけど、途上国の鉱山で現地の人と交渉する大変な仕事。彼はエメラルドに命かけてますね。好きな人はそのくらい魅了される宝石です」
色々と興味深いお話を伺ううちに、眠らせておくのはもったいないなという気持ちになってきて。。「来月誕生日だし、この指輪を生まれ変わらせていただこう!」と決めました。急な展開だけど。。やった〜 久しぶりのオーダーメイドジュエリー♥自分にご褒美あげるの大好き(笑)
「エメラルドは内包物(インクルージョン)が他の貴石と比べて多いから、割れやすくてジュエリーにセットする際はとても気を使うんですよ。頑張ります」とTAKAさん。
石が目立つように極力シンプルにしたいという希望を伝えると、「周りを囲うフクリン止めでなく、四隅を爪で止め
さすがプロ。見栄えだけでなくて、着けたときを想定してアドバイスをくださいます。石の向き、周りのダイヤをどうするかなどを話し合って見積もりをいただき、作業へ。
(可愛い、シンプル、ゴージャスなどの好みや、使う用途など大まかなアイディアがあれば、相談しながら提案してくださいます。納得いってから作業に入るので安心)
今回は自分にとって一番使い易い中指用に作っていただくことにしました。TAKAさんが一見して選んだサンプルをはめてみると「ちょっとキツいかも」。
「第2関節でほんの少しキツく感じるくらいがいいんです。でないと簡単に抜けてしまって、あまりはめなくなると思いますから」
なるほど。実はキツいのがイヤで少し大きめに作ったリング、指の付け根で回っちゃうからあまりはめてないんですよね(汗)今回はプロのご意見に従ってサイズを決めました。
(ちなみに、◯号というサイズ表示でなく、こちらはアルファベットです)
石を台座からはずし、汚れを落とした後「カットが深くて内包物が少ない良質なエメラルドで、澄んだ緑が深くて照りがいい。すごく印象の強い石」だと思ったそう。
「エメラルドの台座部分は、おばあさまのリングの台座をそのまま利用することにしました。台座部分を綺麗に取り外し、弱い部分は補強して形を整え、石の座りを正して爪をリシェイプ。この部分が使えるのなら、気持ちがそのまま伝わりそうな気がしたので。」と後でお聞きして心遣いに感動です。
今回、石を際立たせるでシンプルな指輪を1つ、そして周りのダイヤを使ってもう1つ指輪を作っていただくことにしました。2本目を作るには少しメタルが足りないということで、追加料金をお支払いするか、更に違う指輪を使うか相談。素材だけお渡ししてゼロから創る感覚で、わくわくします!
そして。。1つめが出来上がりました。
ベルベットの小箱を開けた瞬間、祖母が目の前にいるような気持ちになって胸が一杯に。。
奄美大島出身のふくよかな、よくしゃべる人で。ケアンズに来たとき、サトウキビ畑が続く風景を見て「故郷に似ている」と何度も言っていた。
12人兄弟の長女で、下の兄弟の面倒を見ながら機織りをする少女時代を送ったという祖母。父親は小学校の校長先生で、勉強したかったけど、女に学問は必要ないと言われ「隠れて蔵で本を読んでいた」と聞いています。
10代で奄美の人とお見合い結婚。新天地を求めて、頼る人が誰もいない名古屋へ。当時は本州に来るのにパスポートが必要だったとのことで、海外に出稼ぎに行く感覚だったでしょう。戦争も乗り越えた、怒濤の一生であったと思います。もっと色んな話を聞いておけば良かったなあと、今になって後悔。。
家に来る宝石商の方から、嬉しそうに石を選んでたこと。お洒落が好きで「あんたは何でそんなに地味なの」とよく言われたこと(笑)。
晩年、イエスキリスト巡礼の旅をしたときの話を何度もしてくれたこと。私がケアンズに移住する前、「暑いだろうから浴衣を持っていきなさい」と呉服屋さんに一緒に行って生地を買い、手縫いで仕立ててくれたこと。(「浴衣なんて要らない」と言ってしまった若かりし頃の自分を叱りたい。。)
小学生のとき2ヶ月弱入院した私に付き添ってくれた祖母。初孫だったので、相当に可愛がってもらいました。
輝く指輪を見たら、一気に色んな情景を思い出し、言葉がすぐに出ませんでした。はめてみると祖母の温かさが蘇り、嬉しくて何度も自分の手元を眺めました。ジュエリーの魔法。。ですね。
TAKAさんに、今回のリメイクについてお聞きしました。
今回こだわったことは何ですか?
「ご注文はシンプルで腕の細いリングとの事でしたのでご注文通り制作を致しましたが、私の勝手な今回のこだわりは石が際立つ事。スッキリ限りなくシンプルに仕上げる事。
細身とは言え、華奢になり過ぎないよう、普段使いに十分の強度を持たせること。着け心地がいい事。長く使っていただける事。見えない所でも手を抜かない事等でしょうか。」
実は、もっとリングの部分が細くても良かったかなとチラッと思ったのですが、強度を考えてギリギリの細さにしてくださったのですね!有り難うございます。
行程において難しかった部分は何ですか?
今回の様なシンプルなデザインの場合、一番難しいのは、真っ直ぐのラインを真っ直ぐに、直角は直角に、中心がずれないようにフィニッシュする事です。
人間の目にはミクロのずれが大きなずれとして認識されてしまうのでそれが難しいです。更に天然の色石のカットはパッと見正しい長方形に見えても、形が左右対称でなかったり石の底のカットが歪んでいる事も多い。こういった石を使って、出来る限り歪みなく見えるように作り上げる事が大事だと思います。
出来上がりの感想は?
やっぱりリングをお渡しした時に恵子さんの顔を見た時が一番楽しかったですよ。素敵なリングに仕上がって喜んで頂けたのでいい仕事が出来たなと嬉しく思っています。
一般的にリメイクで気をつけていることは何ですか?
お客様の大切なジュエリーを新たな形に生まれ変わらせるお仕事ですので、その思いまで引き継げるといいなと思って作っています。そしてその扱いには細心の注意をはらっています。
着け心地がいい事、長く使っていただける事、見えない所でも手を抜かない事。これは何を作る時にでも考えています。
今回のリフォーム、自分のルーツを思い出して感謝があふれてきて、エモーショナルな体験でした。シンプルだから、日常にも活躍してくれそうで楽しみ♥ 今は、ダイヤを使った2本目の指輪のデザインをワクワクしながら考えています。有り難うございました。
ジュエリーのオーダーメイドやリフォームをお考えの方、こちらのフォームをご利用ください。TAKAさんがお話を伺い、無料でお見積もりしてくれます。ケアンズの方はもちろん、オーストラリア他州や日本からのご注文も受けているとのこと。お気軽にご相談を。