豊かな生き方のエッセンスを江戸時代に見る

  2018/09/21  幸せのヒント

いつ買ったか覚えてないんだけど、本棚に何冊か江戸時代の暮らしに関する本があって、改めて読んでみるとすごく面白い。

人工知能が台頭して、これからの働き方、暮らしはどうなるのか。環境の破壊が進み、地球はどうなっていくのか。。過渡期にいる私たちに、豊かな人生のエッセンスを示してくれるようで。

 

 

徳川家康の壮大なビジョンのもと、ひなびた湿地に作られた江戸という都。

武学者であった家康の、「自他不敗」(私も負けないし、あなたも負けさせない)、「相互扶助」の考え方が市民にも浸透した「花のお江戸」。

人々が大切にしていたのは、日々の生活を楽しむことと、人と人のつき合いでした。

子供やお年寄りを守り、文字が読めない人でも口伝えでコミュニケーションを取って、みんなが意気を合わせて元気に”共生”することを目指していたそうです。

 

家康は、天下を取ることより、もっともっと向こう、数百年先の理想の国の姿を胸に秘めて江戸を創ったのではないでしょうか。実際、300年近くも争いや革命がなかった国は、世界でも他にありません。

家康が作った幕府では、要職を「大老」「老中」とし、各藩の藩主に次ぐのは「家老」。「老」という文字を大事にしていました。

江戸には、旦那たちが40代の半ばから隠居してコミュニティの中心になるという文化もあり、「老い」が尊ばれていたのです。

若さに象徴されるような、スピードや力や量に価値があるとは考えられておらず、「リサイクル」(循環型の暮らし)や「ボランティア」(相互扶助)が大切にされ、人も流通もゆっくり

若さ=いいこと。アンチエイジングが主流の現代とは逆の価値観ですね。

「そんなに焦るな。こんな時はな。」ってたしなめてくれる頼りになるご老人がいたのかな。ギラギラした競争社会ではなく、どこか達観してのんびり構えた風の成熟した社会が目に浮かびます。

 

 

戦国時代が終わり、泰平の世であったとは言え、医療が発達しておらず、しょっちゅう火事があったり(地震も多かった)、いつ死ぬか分からないという死生観が根本にあった江戸時代。

明日どうなるか分からないなら、今となりにいる人と気持ちよくつき合いたいし、必要以上の物を持つ必要もないし、ご飯を食べるためと割り切って1日の一定の時間だけ仕事に当てられる。

自ずと、人間関係も、生き方・働き方のスタイルも決まってくるというものです。

 

庶民にとって働く=傍(ハタ)を楽にするというもので、朝飯前(あさめしまえ)はご近所の地域活動、午前は収入のための仕事をして、ゆっくりお昼を取って、午後はほとんどボランティアをしていたそう。

お金をたくさん持っている人じゃなく、人のために尽くせる人が尊敬されていたのです。

 

仕事に対する考え方も、いたってシンプル。自分ができることで、ご飯を食べるには何をしたらいいか考えて行う。それだけ。(奉公に出たり武家、農家は別)

こんなサービスがあったら助かるんじゃないかという発想から、ユニークな仕事がたくさんあったそうです。猫のノミ取り屋とか、耳かき屋とか、親孝行屋とか(笑)

 

女性が働くことも普通でした。

「男性の職業は、物を売っていくらという稼ぎですが、女性の職業は、サービス業というか、精神的に、「お世話になったから、これね」というふうに、その人の才覚でもっていくらでも袖の下が入るような職業が多かったですね。だから、頭の使いようで、女性の方がいい商売をしていた。」

「工業化が始まる前に、サービス業の方が広がっちゃった」

対談・杉浦日向子の江戸塾より

 

ニーズがあれば、商売が生まれていった自由な時代。

今よく聞かれる女性の起業やパラレルキャリアは、江戸時代では普通のことだったんですね。

仕事に対する考え方が現代は多様化してますが、江戸時代の町人に言わせれば「自分ができることを、とっととやって人の役に立ちなよ」って感じかもしれません。

 

最近読んだ、働き方に関する本。

 

「お世話になったから、これね」ってお金の本質だと思います。

元々、物々交換が不便ということで生まれたのがお金で、受け取ったお返しに「有り難う」と使うもの。現代は「いかにもらうか」に随分フォーカスがいってしまいました。。

江戸時代はお金を預けるところ(銀行)がなく、火事や病気や天変地異など、明日の命の保証もなかったから、自然と「宵越しの金は持たない」というスタンスになった背景があるとはいえ、やはり人々の価値観は現代と違っていたようです。

 

また、江戸時代は、女性が堅実に働いていたので、芸術や発明や研究に没頭できた男性がたくさん出た時代でもありました。

ただお茶を運ぶだけのからくり人形や、空を飛ぶことに一生を捧げた人や。何かの役に立てよう!というより、純粋に大好きを追求していった人がいた。

 

杉浦「江戸文化の一番おもしろいところって、無駄の味なんですよね。無駄なところが一番いい。」
山崎「やっぱり女性は、あれは無駄なもんだからというんで深入りはしなかったんでしょうね(笑)。

 

独自の文化が華開くのは、伸びやかで、無駄、ゆとりがあるところ。

今は、好きなことに没頭したくても、お金が稼げないことだと「そんなことして意味あるの?」と罪悪感を持ってしまったり、揶揄されたりする。

そんな不要な重しがなくなったら、ずいぶん面白い世の中になるのに。

 

もっとも、助け合うのが普通で、戦も革命もなく、貧富の差も激しくない(日本ほど上層と下層の差が極端でない国は、世界のどの国、民族にもないそうです。)という安心の土台があったからこそのクリエイティブだと思います

 

 

イギリスの産業革命に始まって、効率と拡大を追い求め、技術が発達した末に、人工知能に人間が脅かされ始めた現代。

今まで人類が経験したことがない時代に入って、先が見えなくもありますが、労働の部分を機械がやってくれるのなら、人はそれぞれが心疼くことに時間を注いでいくことができ、もっと多様性と創造性にあふれた世の中になっていくはず。

 

そのために、比較競争がなく、「足るを知る」安らぎを心に持つことだと思います。

時代の流れに抗わなくても、心の中は1人1人が変えていける。

 

時代を切り拓く人の想いは、現実に反映する。

今わたし達が想いと行動を変えることが、確実に未来を創る。

 

命のはかなさを知るからこそ、今をたくましく生きた江戸時代の人々のように。

何が正しいとか悪いとか、そんな野暮な話でなく、ゆったりと遊び心と品格を持って、自分を生きていきたい。周りを大切にし、簡素で軽やかに。

空き時間の読書から、そんなことを願う午後でした。

 

 

幸せのヒント

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